「矯正する時代」から「予防する時代」
更新日:9月5日
日本の眼科医療において、子どもの近視進行抑制治療をめぐる重要な制度改正が行われました。2026年6月より、近視の進行抑制を効能・効果とする点眼薬(リジュセアミニ点眼液0.025%など)を使用する場合、一定の条件のもとで、診察や眼科学的検査などの保険診療部分と、点眼薬の自費負担部分を併用できる「選定療養」の仕組みが導入されました。
これまで、このような近視進行抑制治療は、点眼薬だけでなく、それに伴う診察や検査も含めて自由診療として扱われることが多く、定期的な通院を必要とする家庭にとって経済的負担が課題となっていました。今回の制度改正により、近視進行抑制薬を使用している患者さんに対する屈折検査や矯正視力検査、眼軸長測定などの眼科学的検査について、一定の条件を満たす場合には公的医療保険で算定できるようになりました。ただし、眼科学的検査については、近視進行抑制を目的とする治療では年2回の受診に限り、1回の受診につき2種類までという算定上の要件が設けられています。
また、自治体によっては、保険診療部分が子ども医療費助成制度の対象となる可能性があります。助成制度の内容や自己負担額は自治体によって異なるため、実際の負担額については、お住まいの自治体や受診する医療機関にご確認ください。

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視力矯正は「見えるようにする」にから「近視を進ませない」時代へ
これまでの近視対策では、視力が低下した後にコンタクトレンズや眼鏡、屈折矯正手術(レーシック・ICL)を使用して「見えるようにする」という視力矯正が中心でした。しかし近年は、それに加えて、成長期に眼軸長が過度に伸びることを抑え、近視そのものの進行をできるだけ抑制する「近視コントロール」という考え方が重要になっています。
現在、子どもの近視進行抑制には、
低濃度アトロピン点眼薬
近視進行抑制を目的とした眼鏡レンズ
多焦点・特殊設計コンタクトレンズ
オルソケラトロジー
など、複数の選択肢があります。
一部の治療法については、点眼薬との併用により追加的な近視進行抑制効果が得られる可能性も報告されています。ただし、すべての子どもに同じ治療法や組み合わせが適しているわけではありません。年齢、近視の程度、進行速度、眼の状態、生活環境などを踏まえ、眼科医と相談しながら治療法を選択することが重要です。海外でも小児近視への対策は進んでおり、近視進行抑制を目的とした眼鏡レンズなど、新しい選択肢が実用化されています。
日本でも、2024年12月に「近視の進行抑制」を効能・効果とするリジュセアミニ点眼液0.025%が国内で承認され、さらに2026年度には選定療養制度および診療報酬の整備が行われました。小児近視を単に矯正するだけでなく、将来を見据えて進行を抑えるという考え方が、国内でも本格的に広がり始めています。
日常生活でできる近視対策:重要なのは「屋外活動」
近視対策は医療だけではありません。
特に、子どもが屋外で過ごす時間を増やすことは、近視の発症リスクを低下させる可能性があることが、システマティックレビューやメタアナリシスでも示されています。一方、スマートフォンやタブレットなどのデジタル機器の長時間使用については、画面そのものだけを問題とするのではなく、近距離を見る時間が長くなることや、屋外活動の時間が減ることにも注意する必要があります。デジタル機器を長時間連続して使用することを避け、適度に休憩をとること、十分な屋外活動の時間を確保することが大切です。
学校の健康診断などでお子様の視力低下を指摘された場合、「眼鏡が必要かどうか」だけでなく、現在どの程度の近視があり、今後どの程度進行する可能性があるのかという視点で評価することが重要です。今回の制度改正によって、近視進行抑制治療に伴う診療費の一部について経済的負担が軽減される可能性があります。お子様の視力低下が気になる場合は、まず眼科を受診し、近視の程度や進行状況について適切な検査を受けたうえで、近視進行抑制治療を含めた選択肢について相談することをお勧めします。近視は、単に「見えにくくなったら眼鏡をかける」だけではなく、成長期から将来の眼の健康を考え、できる限り進行を抑える時代へと変わりつつあります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。
※個々の患者さんに対する診断・治療を示すものではありません。
※治療の適応については眼科医に必ずご相談ください。
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