お子様の色付きレンズとプリズムレンズについて
2026年8月21日、日本眼科医会、日本眼科学会、日本弱視斜視学会、日本小児眼科学会、日本近視学会、日本視能訓練士協会の6団体から「児童生徒のサングラス・カラーレンズ等の使用に関する見解 ― 保護者・学校関係者の皆さまへ ―」が公表されました。この見解では、紫外線対策の意義を認める一方、健康な目のお子様が学校生活全般でサングラスやカラーレンズを常時装用することを一律に推奨できる十分な医学的根拠はないとされています。眼疾患による羞明、術後管理、片頭痛、感覚過敏など、医学的な理由で必要となる場合については、状況に応じた対応が必要です。また近年、カラーレンズと合わせてお子様に過剰なプリズムレンズを処方されている例もございます。プリズムレンズもカラーレンズと同様に、状況に応じた対応が必要です。色付きレンズやプリズムレンズの効果そのものを否定するのではなく、使用する目的、場面、時間を明確にしたうえで、その必要性を個別に判断することが基本となります。 色付きレンズの常時装用について 色付きレンズによって「まぶしさが減った」「見やすくなった」と感じる方もいます
Sakura
9月21日読了時間: 8分


動眼神経麻痺に伴う斜視と複視へのアプローチ
ご相談内容 「昔から動眼神経麻痺による斜視で悩んでいます。眼科・眼鏡店では今以上のプリズムは制作できないと言われました。斜視手術も検討したのですが、年齢が高齢のため、適応外だそうです。なんとかならないでしょうか」 今回は、長年「動眼神経麻痺」による外斜視と複視(物が二重に見える症状)でお悩みだった70代のお客様の事例をご紹介します。これまで眼科や他の眼鏡店にご相談されてきましたが、「これ以上のプリズム眼鏡は制作できない」と言われ続けてきたそうです。また、斜視手術も検討されたものの、ご年齢に加え、長年にわたる斜視によって目の使い方や感覚が固定化していることなどを理由に、適応外という診断を受けておられました(一般に斜視手術の適応は年齢のみで一律に判断されるものではなく、全身麻酔のリスクや、長期罹患による抑制・固視ズレの定着度合い、術後に複視がかえって出現するリスクなど、複数の要因を踏まえて総合的に判断されます)。「なんとか日常生活の不便さを軽減できないか」とご相談をいただきました。 動眼神経麻痺と外斜視のメカニズム 動眼神経は、目を内側に向ける筋肉な
Sakura
7月7日読了時間: 6分
夕方になると目がかすみます
ご相談内容:「朝から夕方まではよく見えますが、夕方以降になると見づらさを感じるんです」 このような症状は、「夕方老眼」と呼ばれます。これは複数の要因が組み合わさって起こる現象です。本記事では、エビデンスに基づき、そのメカニズムを解説します。 毛様体筋の疲労による調節力の減退 私たちの目は、近くを見る際に「毛様体筋」という筋肉を緊張させ、水晶体を厚くしてピントを合わせています。しかし、長時間のデスクワークやスマートフォンの使用により、この筋肉は夕方には疲弊し、ピント調節機能が一時的に低下します。 1) Saito, S., Taptagaporn, S., & Salvendy, G. (1994). Visual fatigue in VDT (Video Display Terminal) work: Its measurement and many-sided aspects. Industrial Health, 32(4), 149–166. 瞳孔の散大と被写界深度の低下 夕方、周囲が暗くなると、目は光を取り込もうとして瞳孔を大きく開きま
Sakura
4月24日読了時間: 5分


網膜投影型AIスマートグラス
ご相談内容:「網膜投影型AIスマートグラスに遠近両用レンズを加工してほしいです」 今回は、網膜投影型AIスマートグラスへのレンズ加工についてご相談いただきました。このタイプのAIスマートグラスは、一般的なスマートグラスのようにレンズ面そのものに画像や文字を表示する方式とは異なり、映像情報を眼に届ける独自の表示方式を採用しています。そのため、通常の視界を確保しながら、メールやメッセージ、ナビゲーションなどの情報を視覚的に確認することができます。「名探偵コナン」に登場する江戸川コナン君の眼鏡のように、レンズ上に画像が浮かび上がるタイプをイメージされる方も多いと思いますが、今回のスマートグラスは少し仕組みが異なります。 従来のAIグラスとの違い 従来のAI・ARグラスでは、テンプル内部などに配置されたマイクロプロジェクターからの光を、ウェイブガイドと呼ばれる光学構造を通して表示する方式が広く用いられています。 この方式では、レンズ自体に特殊な光学構造が組み込まれているため、視力が変化してレンズ交換が必要になった場合には、メーカーへ送付して専用レンズを製
Sakura
4月6日読了時間: 3分


脳卒中による内斜視
ご相談内容:「フレネル膜プリズムで複視は解決されたんですが、ぼやけて見えてしまい、車の運転や日常生活に不安を感じます」 今回は、橋(脳幹)の脳卒中後に内斜視を発症し、複視(物が二重に見える症状)をフレネル膜プリズムで補正されているお客様からのご相談です。眼位を確認すると、内斜視の角度は約32Δ(プリズムディオプター)と比較的大きく、角度に換算すると約18°に相当します。脳幹には眼球運動を制御する重要な神経経路が集まっています。そのため、橋の脳卒中によってこれらの経路が障害されると、眼球運動に左右差が生じ、斜視や複視が現れることがあります。橋にはPPRF(paramedian pontine reticular formation:傍正中橋網様体)をはじめ、水平眼球運動に関係する神経機構が存在します。障害される部位や範囲によって眼球運動障害の現れ方は異なりますが、今回のように眼位のずれによって複視が生じるケースもあります。 ※参考:城倉健.(2020). 脳卒中と眼球運動障害:橋の神経眼科学. 神経眼科, 37(2), 129–139. フレネル膜
Sakura
2025年12月2日読了時間: 4分


眼球内腫瘍術後の眼球運動障害
2年ほど前に眼球内腫瘍摘出手術を受けられたお客様です。腫瘍摘出後、眼球運動障害によって両目での見え方が安定しないことにお悩みでした。手術を行ったのは左目です。しかし、術後は両目とも内斜視傾向が強くなり、眼球運動障害によって遠近感(距離感)の知覚が難しい状況でした。街中でよくつまずいたり、壁にぶつかってしまう頻度が多くなり、 ADL( Activities of Daily Living )は低下 。そこで内斜視の抑制と眼球運動障害のケアを目的としたレンズの作製をご依頼をいただきました。 画像1. 2025/05の眼球運動検査(HESS) 画像2. 2025/09の眼球運動検査(HESS) 画像①の結果から、左目の眼球運動障害が確認されます。また左右眼ともに眼球の内旋傾向(内斜視)が示されています。レンズ装用後4ヶ月の画像②の結果では、左目の眼球運動障害、眼球の内旋(内斜視)が少し抑制されています。歩いていても4ヶ月前より転倒・壁にぶつかる頻度が減少し、通院先のリハビリテーション病院ではADL指標の改善が確認されているそうです。今回はケースでは
Sakura
2025年10月16日読了時間: 2分
レーシック術後のリカバリーレンズ
ご相談内容:「この1〜2年で、遠くも近くも見えにくくなりました」 15年前にLASIK(レーシック)手術を受けられたお客様です。術後の視力は両眼とも2.0まで改善していましたが、2年ほど前から遠くも近くも見えにくくなり、それに伴って頭痛や眼精疲労を感じる頻度も増えてきたとのことで、ご相談いただきました。屈折状態および調節力を確認したところ、以下の結果でした。 (R)0.3(1.5)× S+3.75 D C-1.75 D Ax95 ACC 0.52 (L)0.2(1.5)× S+4.25 D C-2.25 D Ax90 ACC 0.40 ※ACC:Accommodation(調節力) 両眼とも矯正視力は1.5と良好でしたが、裸眼視力は右眼0.3、左眼0.2、両眼でも0.4で、遠方も見えにくい状態でした。さらに、両眼とも比較的強い遠視と乱視があり、調節力も低下していました。そのため、遠方だけでなく近方を見る際にも負担がかかりやすく、今回訴えられていた「遠くも近くも見えにくい」という症状と一致する状態でした。 そこで今回は、遠近両用レンズを用いて遠視と
Sakura
2025年9月10日読了時間: 5分
網膜剥離術後のリカバリーレンズ
ご相談内容:「網膜剥離の手術後、頭を傾けて見ないと焦点が定まりません」 網膜剥離の手術を受けられたお客様 網膜剥離の手術方法の一つに「強膜バックリング手術」があります。これは、眼球の外側にシリコン製のスポンジなどを縫い付け、眼球壁を内側に押し込むことで、剥離した網膜を元の位置に戻す手術です。網膜を復位させるために重要な手術ですが、術後には眼球運動に影響が生じることがあり、眼位のずれや複視(物が二重に見える)などの症状がみられる場合があります。 今回のお客様も、バックリング手術後から複視に悩まれていました。さらに、物を一つに見ようとすると自然に頭が傾いてしまう状態がみられました。このように、眼位や眼球運動のずれを頭の位置で補おうとして生じる頭位の変化を「眼性斜頸」といいます。今回は、手術を受けられた眼科クリニックからのご紹介でご来店いただきました。検査を行ったところ、遠方視において、垂直方向に10.26°(18Δ)、水平方向に5.7°(10Δ)の眼位ずれが確認されました。また、術後から頭を傾けて見る状態が続いていたこともあり、頸部の疲労感や胸鎖乳突
Sakura
2025年5月16日読了時間: 3分
多焦点眼内レンズ挿入後のリカバリーレンズ
ご相談内容:「遠く近くともにボヤけた視界になって困っているんです。特に大好きな本が読めなくなって困っています」 白内障手術で多焦点眼内レンズを挿入された後、遠くも近くもぼやけて見えるようになり、特に読書がしづらくなったとのことでご相談いただきました。手術後の裸眼視力は、遠方で右眼0.7、左眼0.6、両眼0.9、近方では右眼0.2、左眼0.3pです。屈折状態を確認すると、両眼ともやや遠視側にあり、乱視も残っていました。 (R)0.7(1.0)× S+0.75 D C-1.25 D Ax85 (L)0.6(1.0)× S+0.75 D C-1.75 D Ax95 眼鏡で遠視と乱視を補正すると、左右とも遠方視力は1.0まで向上します。このことから、術後に残っている屈折誤差が、ぼやけた見え方に関係している可能性が考えられました。お客様は再手術についても検討されていましたが、再手術によって希望する見え方が得られるかどうかには不確定な部分があり、まずは身体的・経済的な負担の少ない眼鏡による補正をご希望されました。そこで今回は、残っている遠視と乱視を補正すると
Sakura
2025年4月18日読了時間: 4分
多焦点眼内レンズ挿入後のリカバリーレンズ
ご相談内容:「白内障手術後、遠くも近くも見えにくいんです。信号も2つ見えるようになりました」 白内障手術で多焦点眼内レンズを挿入された後、遠くも近くも見えにくくなり、さらに信号などが二重に見えるようになったとのことでご相談いただきました。手術後の裸眼視力は、遠方で右眼0.4、左眼0.3、両眼0.5、近方では右眼0.3、左眼0.3pです。 屈折状態を確認したところ、以下の結果となりました。 (R)0.4(1.0)× S+1.50 D (L)0.3(1.0)× S+1.75 D 両眼とも遠視が残っており、眼鏡で補正すると左右とも1.0まで視力が向上します。多焦点眼内レンズは、遠方から近方まで幅広い距離を見やすくし、眼鏡への依存を減らすことを目的とした眼内レンズです。ただし、術後に遠視や近視、乱視などの屈折誤差が残ると、本来期待される見え方が得られにくくなる場合があります。今回も遠視が残っていたため、それが遠方・近方ともに見えにくさを感じる要因の一つと考えられました。一方、「信号が2つに見える」という症状については、遠視だけでは十分に説明できません。詳
Sakura
2025年1月30日読了時間: 3分