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​ブログでは視覚に関する論文紹介を中心に更新しています。

Does Visual Training Enhance Athletes' Decision- Making Skills and Sport- Specific Performance? A Systematic Review and Meta- Analysis

  • Sakura
  • 6月21日
  • 読了時間: 5分

更新日:6月22日

Guo, Y., Chen, C., Peng, J., Deng, L., & Yuan, T. (2025). Does Visual Training Enhance Athletes' Decision-Making Skills and Sport-Specific Performance? A Systematic Review and Meta-Analysis. Scandinavian journal of medicine & science in sports, 35(10), e70140.


題名: 視覚トレーニングはアスリートの意思決定スキルと競技パフォーマンスを高めるか?システマティックレビューとメタアナリシス


目的: 視覚トレーニング(visual training;以下VT)が、アスリートの意思決定スキルと「競技専門的パフォーマンス(sport-specific performance)」に与える影響を、ランダム化比較試験(RCT)を統合したメタアナリシスによって体系的に評価することです。あわせて、対象者側の要因(性別・年齢・競技レベル・競技種目)とトレーニング側の要因(期間・頻度・種類)が効果をどの程度左右するかを検討しました。


対象研究・対象者: 健康なアスリート(競技者分類でTier 3以上、年齢10〜60歳)を対象としたRCT。データベース検索で得られた3,435件の論文から、選定基準を満たした27件(参加者669名)を最終的なメタアナリシスに採用しました。


方法研究デザイン:PRISMA声明に準拠したシステマティックレビューおよびメタアナリシスです(PROSPERO登録:CRD42024568547)。文献検索:Web of Science、PubMed、MEDLINE、SPORTDiscusの4データベースを用い、2025年1月までに公開された英語論文を対象としました。選定基準:ベースラインと介入後の測定を備えたRCTで、意思決定スキルまたは競技専門的パフォーマンスを少なくとも1つ評価しているものとしました。短期的な「慣れ」による学習効果を排除するため、介入期間が4週間未満の研究は除外しています。


解析:効果量にはバイアス補正済みのHedges' gを用い、ランダム効果モデル(DerSimonian-Laird法)で統合しました。各研究のバイアスリスクはCochrane RoB 2で評価しています。


対象研究の概要:採用された27件はいずれもRCTで、サッカー、バレーボール、ソフトボール、クリケット、野球、ラグビー、ハンドボール、カーリング、バドミントン、テニス、空手、クレー射撃など、多様な競技を含んでいます。1研究あたりの参加者は10〜50名、介入期間は4〜12週間、頻度は週1〜3回、1回あたり6〜180分でした。VTの手法は、知覚‐認知トレーニング、視覚‐運動協応トレーニング、複数物体追跡(MOT)、ストロボトレーニング、VR(仮想現実)トレーニングなど多岐にわたります。


結果: VTは一部の指標で明確な効果を示した一方、効果が認められない指標もありました。

意思決定の反応時間(response time):有意な改善が認められ、効果量は大きいものでした(SMD=0.85;95%CI=[0.45–1.24];I²=30%;p<0.01)。

競技専門的パフォーマンス:有意な改善が認められました(SMD=0.49;95%CI=[0.13–0.85];I²=61%;p=0.01)。

単純反応時間(simple reaction time):有意な改善は認められませんでした(SMD=1.16;95%CI=[−0.52–2.85];I²=87%;p=0.18)。

選択反応時間(choice reaction time):有意な改善は認められませんでした(SMD=0.33;95%CI=[−0.13–0.79];I²=47%;p=0.16)。

意思決定の正確性(response accuracy):有意な改善は認められませんでした(SMD=0.23;95%CI=[−0.20–0.66];I²=63%;p=0.29)。

サブグループ解析:性別・年齢・競技レベル・競技種目、また介入期間・頻度・種類のいずれで分けても、群間に統計的に有意な差は見られませんでした。ただし効果量や有意性の傾向からは、個人差やトレーニング設計が効果を部分的に調整している可能性が示唆されました。


結論: VTはすべての指標を一様に高めるわけではありませんが、意思決定の反応時間と競技専門的パフォーマンスを有意に改善する、有効な補助的トレーニングとなりうるものです。一方で、単純反応時間・選択反応時間・意思決定の正確性には明確な効果が認められませんでした。これは、VTが「反応の速さそのもの(基礎的な神経反応)」を底上げするのではなく、経験に基づく予測能力を活かして、慣れた場面での情報処理を速める方向に働くためと考えられます。著者らは実践的な指針として、介入期間を長め(8週間以上)に取り、頻度はむしろ週3回未満に抑えること、意思決定が重要となるチームスポーツで導入すること、そして要素技能を直接鍛える「コンポーネント・スキル・トレーニング」を用いることを推奨しています。


コメント:視覚トレーニングによって意思決定の“反応の速さ”は有意に向上した一方で、意思決定の“正確さ”には明確な改善が見られませんでした。つまり「速く反応できるようになること」と「正しく判断できるようになること」は別物で、必ずしもセットでは伸びないということです。複雑で目まぐるしく変わる試合状況では、急いで反応したぶん情報処理が浅くなり、かえって判断を誤る場面もありえます。「反応が速い=プレーが上手くなる」と短絡せず、何のための“速さ”なのかを意識することが大切だと言えそうです。この「速さは上がるが正確さは上がりにくい」という傾向は、ストロボトレーニング(点滅するメガネで視界を間引きながら行うトレーニング)を個別に検討したメタアナリシスでも同様に見られます(Guo et al., 2025) 。反応時間や知覚‐運動の統合といった“競技課題に近い能力”には中程度の効果が報告されている一方、意思決定の正確さへの効果は乏しいという結果です。しかもその効果の大きさは、点滅の設定や競技の種類、個人差によって大きく左右され、研究の規模も小さいものが多く、「万能で効果が高い手法」とまでは言いきれないのが現状です。たとえば Fransen (2024) は、こうした知覚・認知トレーニングが「競技パフォーマンスそのもの」へ波及する(=遠転移する)という主張には、それを裏づける十分な証拠がないと論じています。反応時間や敏捷性といった“トレーニング課題に近い能力”の改善(近転移)は数多く報告されているものの、それが試合での実際のパフォーマンス向上に直結するかどうかは、いまだ不明瞭だというわけです。実際、今回ご紹介した論文には他の研究者から反論(Appelbaum et al., 2025)(Fransen, 2025)も寄せられており、議論はまだ決着していません。したがって、現時点でビジョントレーニングを“効果が確立した万能の手法”と捉えるのは早計で、あくまで基礎体力・技術練習を補う一手段として、過度な期待を持たずに取り入れるのが妥当と言えそうですし、その効果については非常に曖昧であることを理解する必要があります。


参考文献

1) Guo, Y., Chen, C., Peng, J., Deng, L., & Yuan, T. (2025). Does visual training enhance athletes' decision-making skills and sport-specific performance? A systematic review and meta-analysis. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports, 35(10), e70140.

2) Fransen, J. (2024). There is no supporting evidence for a far transfer of general perceptual or cognitive training to sports performance. Sports Medicine, 54(11), 2717–2724.

3) Appelbaum, L. G., Lochhead, L., Feng, J., Erickson, G., Liu, S., & Laby, D. M. (2025). Limited evidence is not no evidence: A rebuttal to Fransen, 2024. Sports Medicine, 55(1), 241–242.

4) Fransen, J. (2025). A response to Appelbaum et al. "Limited evidence is not no evidence: A rebuttal to Fransen, 2024." Sports Medicine, 55(1), 243.

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