Uptrend in esotropia incidence in the era of excessive smartphone use: A nationwide populationbased cohort study in Japan, 2014–2019
- Sakura
- 6月21日
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Wada, S., Miyata, M., Miyake, M., Kido, A., Kamei, T., Ueshima, H., Nakao, S., Yamamoto, A., Suda, K., Nakano, E., Tamura, H., & Tsujikawa, A. (2026). Uptrend in esotropia incidence in the era of excessive smartphone use: A nationwide population-based cohort study in Japan, 2014-2019. PLOS digital health, 5(4), e0001382.
題名: スマートフォン過剰使用時代における内斜視の増加─日本全国規模の人口ベースコホート研究(2014〜2019年)
目的: スマートフォン利用者が急増した2014〜2019年の日本において、内斜視(esotropia)の年間発生率がどのように変化したかを明らかにすることです。近年、スマートフォンの過剰使用に続いて発症する「急性後天性共同性内斜視(AACE)」の症例報告が相次いでいますが、これまで大規模な疫学的証拠は示されていませんでした。本研究はその空白を埋めることを目指しています。
対象: ほぼ日本の全人口をカバーする公的データベース(NDB:レセプト情報・特定健診等情報データベース)を用い、2014〜2019年に新たに内斜視と診断された症例。先天性・乳児・調節性・感覚性の内斜視や外転神経麻痺など、AACEとの関連が薄いと考えられるものは除外しています。
方法:研究デザインは後ろ向きの全国規模・人口ベースコホート研究(京都大学)です。
データ:NDBを用い、2014〜2019年の各年について、新規の内斜視診断数と、内斜視に対する斜視手術の件数を集計しました。各年の発生率(人口10万人・年あたり)は、新規診断数をその年の日本の人口で割って算出しています。解析:内斜視の年間発生率と「スマートフォンの世帯保有率」(総務省データ)との相関を、スピアマンの順位相関で検討しました。なお、新型コロナの影響で受診控えが生じたため、2020年以降のデータは含めていません。
結果: 観察期間を通じて、内斜視の発生率は緩やかに増加していました。
発生率の増加:内斜視の年間発生率は、2014年の32.26(10万人・年あたり、95%CI 31.95–32.57)から、2019年の36.61(95%CI 36.28–36.95)へと増加しました。平均の年間増加率は2.49±1.62%でした。
手術件数の増加:内斜視に対する斜視手術の件数も、同期間に3,061件から3,743件へ増加しました。一方で、新規診断数に対する手術の割合は7.47〜8.08%とほぼ一定で、病気の重症度そのものが変わったわけではないと考えられます。
スマホ普及率との相関:内斜視の年間発生率は、スマートフォンの世帯保有率と統計的に有意な強い相関を示しました(P=0.005、r=0.943)。
人口の高齢化では説明できない:加齢に伴う斜視の影響も検討されましたが、同期間の高齢者(65歳以上)人口の増加が8.3%だったのに対し、内斜視の新規診断数は13.0%増と、高齢化のペースを約1.6倍上回っていました。さらに15歳未満の人口はむしろ6.0%減少しています。症例数が大きく増えたことは、人口構成の変化ではなく環境要因が増加を牽引していることを強く示唆します。
結論: 本研究は、2014〜2019年の日本で内斜視と関連する斜視手術が有意に増加したことを、人口ベースで初めて示したものです。デジタル機器使用の急増がこの増加と関連している可能性があり、スクリーンタイムに関する臨床ガイドラインの必要性が示唆されます。ただし著者らは、これが「生態学的研究(エコロジカル・スタディ)」である点を強調しています。集団レベルでの相関は個人レベルの因果関係を証明するものではなく、他の社会的変化の影響を受けている可能性もあります。実際、6年間の増加率は内斜視(13%)よりもスマホ普及率(30%)のほうが大きく、これは「もともと内斜視になりやすい素因(内斜位=esophoria)を持つ人」で発症が引き起こされている可能性があります。
コメント: この研究のポイントは、「スマホを使えば誰もが内斜視になる」という話ではない、という点です。著者らが想定しているのは、もともと目が内側に寄りやすい素因(内斜位)を持つ人で、長時間の近見作業によって目のバランスを保つ力(外側に向ける開散の働き)が一時的に弱り、発症の引き金になりうる、というメカニズムです。しかし、早い段階であれば、過度なデジタル機器の使用を控えることで改善すると報告しています。著者らは、急性の内斜視を診た際にデジタル機器の使用歴を確認すること、手術を検討する前にまず「デジタル断ち」を試して可逆性を評価すること、そして「20-20-20ルール」(20分ごとに20フィート=約6m先を20秒見る)などの予防策を勧めています。もっとも、これはあくまで集団データの相関を見た研究であり、因果関係が確定したわけではありません。とはいえ、家庭でのスマホ・タブレットの使い方を見直すきっかけとしては、十分に意味のある知見だと言えそうです。お子様の場合は特に、近くを見続ける時間が長くなりがちですから、こまめに遠くを見て目を休ませる習慣づくりを意識することが大切です。