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​ブログでは視覚に関する論文紹介を中心に更新しています。

身体活動と視覚の関係

  • Sakura
  • 3月18日
  • 読了時間: 4分

近年、身体活動と感覚知覚の関係についての研究が進み、運動習慣が視覚知覚や感覚運動統合に影響する可能性が示唆されています。特に、視覚情報と身体運動を統合する「感覚運動系(sensorimotor system)」は、環境の変化に適応する能力に重要な役割を果たすことが知られており、運動学習研究では、身体は環境の変化に応じて内部モデルを更新し、運動と感覚の関係を調整することで適応を実現していると考えられています。

1) Shadmehr, R., & Mussa-Ivaldi, F. A. (1994). Adaptive representation of dynamics during learning of a motor task. Journal of Neuroscience, 14(5), 3208–3224.


人間の視覚は単なる受動的な感覚ではなく、身体運動や周囲環境との相互作用によって調整されています。生態学的視覚理論では、移動中の視覚的流れ(optic flow)が自己運動知覚や空間認識に重要な役割を果たすとされており、この視覚情報と身体運動の統合は、視覚―運動系の適応能力によって調整されます。身体活動量と視覚知覚の関係を検討した研究では、運動習慣の少ない人は、運動習慣のある人と比較して視覚速度を過小評価する傾向があることが報告されています。トレッドミル上で仮想環境を提示した実験では、身体活動量の少ない参加者は、実際の走行速度と一致した感覚を得るために、より速い視覚刺激を必要としました。この結果は、身体活動量が視覚と身体運動の統合的な知覚に関与している可能性を示しています。

2) Gibson, J. J. (1979). The ecological approach to visual perception. Boston, MA: Houghton Mifflin.

3) Caramenti, M., Lafortuna, C. L., Mugellini, E., Abou Khaled, O., Bresciani, J. P., & Dubois, A. (2019). Regular physical activity modulates perceived visual speed when running in treadmill-mediated virtual environments. PLOS ONE, 14(6), e0219017.


また、運動経験の豊富なアスリートでは、視覚刺激の処理速度や視覚運動反応時間が優れていることが報告されています。これはスポーツ活動において、高速で変化する視覚情報を処理しながら身体を制御する必要があるため、視覚運動処理能力が発達する可能性を示していると考えられています。さらに、視覚系には「知覚学習(perceptual learning)」と呼ばれる可塑性があり、反復的な経験によって視覚課題の処理能力が向上することが知られています。加えて、身体運動を伴う活動は脳の神経可塑性を促進し、感覚処理や学習能力を高める可能性があることも報告されています。

4) Hülsdünker, T., Ostermann, M., & Mierau, A. (2019). The speed of neural visual motion perception and processing determines the visuomotor reaction time of young elite table tennis athletes. Frontiers in Behavioral Neuroscience, 13, 165.

5) Sagi, D. (2011). Perceptual learning in vision research. Vision Research, 51(13), 1552–1566.


視覚情報は身体運動の知覚にも影響を与えます。例えば、運動中に提示される視覚的流れは、運動時の努力感や運動強度の知覚に影響することが示されています。このような研究は、視覚と身体運動が相互作用しながら知覚体験を形成していることを明らかにしています。

さらに、加齢研究においては、感覚運動統合能力の低下が運動制御や環境適応能力に影響することが指摘されています。これは身体活動の減少や神経機能の変化が、感覚と運動の統合過程に影響する可能性を示唆しています。

6) Lunghi, C., Sframeli, A. T., Lepri, A., Lepri, M., Lisi, D., Sale, A., & Morrone, M. C. (2020). Physical exercise and visual perceptual learning. Ophthalmic and Physiological Optics, 40(5), 680–691.

7) Parry, D., Chinnasamy, C., & Micklewright, D. (2012). Optic flow influences perceived exertion during cycling. Journal of Sport and Exercise Psychology, 34(4), 444–456.

8) Seidler, R. D., Bernard, J. A., Burutolu, T. B., et al. (2010). Motor control and aging: Links to age-related brain structural, functional, and biochemical effects. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 34(5), 721–733.


また、視覚は刺激の物理的特性だけでなく、色彩やコントラストなどの要因によっても変化することが報告されています。こうした視覚処理の柔軟性は、環境への適応的な知覚調整の一例です。

9) Mentzel, S., Schücker, L., Hagemann, N., & Strauss, B. (2019). Perceiving speed: The color can matter. Color Research & Application, 44(1), 95–103.


以上のように、視覚は身体運動と密接に結びついたシステムであり、身体活動量は視覚情報の処理や視覚―運動統合に影響を与えています。したがって、運動不足の状態では、環境の変化に対する視覚と身体の統合的な適応が相対的に遅くなる可能性が考えられます。ただし、現時点では運動不足が直接的に視覚適応を遅らせることを示した研究は限られており、今後さらなる検証が必要です。

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