多焦点眼内レンズ挿入後のリカバリーレンズ
更新日:9月28日
ご相談内容:「遠く近くともにボヤけた視界になって困っているんです。特に大好きな本が読めなくなって困っています」
白内障手術で多焦点眼内レンズを挿入された後、遠くも近くもぼやけて見えるようになり、特に読書がしづらくなったとのことでご相談いただきました。手術後の裸眼視力は、遠方で右眼0.7、左眼0.6、両眼0.9、近方では右眼0.2、左眼0.3pです。屈折状態を確認すると、両眼ともやや遠視側にあり、乱視も残っていました。
(R)0.7(1.0)× S+0.75 D C-1.25 D Ax85
(L)0.6(1.0)× S+0.75 D C-1.75 D Ax95
眼鏡で遠視と乱視を補正すると、左右とも遠方視力は1.0まで向上します。このことから、術後に残っている屈折誤差が、ぼやけた見え方に関係している可能性が考えられました。お客様は再手術についても検討されていましたが、再手術によって希望する見え方が得られるかどうかには不確定な部分があり、まずは身体的・経済的な負担の少ない眼鏡による補正をご希望されました。そこで今回は、残っている遠視と乱視を補正するとともに、読書など近方での見え方も改善できるよう、累進レンズを用いて調整することにしました。
眼鏡による補正後の見え方
調整後の遠方矯正視力は、右眼 1.0左眼 1.0両眼 1.2 まで向上しました。また、30cmで測定した近見矯正視力も、右眼 0.9左眼 0.9 となり、「ぼやけて見える」という症状も眼鏡装用時にはほとんど感じなくなりました。一方、両眼での遠方裸眼視力は0.9あります。そのため、日中の日常生活では必ずしも眼鏡を常用する必要はなく、読書やテレビなど、よりはっきりと快適に見たい場面を中心に使用していただくことをお勧めしました。
今回のお客様にとって特に重要だったのは「本を快適に読めること」
裸眼で生活できるかどうかだけでなく、その方が日常生活の中で「何を見たいのか」「どの距離を最も大切にしているのか」に合わせて見え方を調整することも、眼鏡を製作するうえでは大切だと考えています。
多焦点眼内レンズと「見え方の質」
多焦点眼内レンズには、遠方だけでなく中間距離や近方にも焦点を振り分けることで、眼鏡への依存を少なくできるという大きな利点があります。その一方で、単焦点眼内レンズとは光学的な仕組みが異なるため、コントラストの感じ方やハロー・グレアなど、見え方の質に違いを感じることがあります。また、多焦点眼内レンズを挿入していても、術後に遠視・近視・乱視などの屈折誤差が残れば、「全体的にぼやける」「遠くも近くもすっきりしない」「期待していたほど近くが見えない」と感じることがあります。今回のケースでも、多焦点眼内レンズそのものだけを問題と考えるのではなく、術後に残っている遠視と乱視を適切に補正することで、遠方・近方ともに見え方を改善できる余地がありました。
「眼鏡をかけない便利さ」と「見え方の質」
白内障手術で眼内レンズを選ぶ際には、「多焦点だから良い」「単焦点だから良い」と単純に決められるものではありません。多焦点眼内レンズには、複数の距離を裸眼で見やすくし、眼鏡への依存を減らせるという利点があります。一方、単焦点眼内レンズは焦点を特定の距離に合わせるため、その距離での見え方を重視したい方に適している場合があります。大切なのは、眼鏡をできるだけ使わずに生活したいのか、それとも特定の距離での見え方の質をより重視したいのかという、ご自身の生活スタイルや希望を整理しておくことです。特に、「読書を長時間楽しみたい」「パソコン作業が多い」「車の運転を重視したい」「できるだけ眼鏡をかけたくない」など、何を優先するかによって適した選択肢は変わります。白内障手術を検討される際には、ご自身が日常生活の中でどの距離の見え方を最も大切にしているのかを眼科医に伝え、それぞれの眼内レンズの特徴やメリット・デメリットについて十分に相談したうえで選択することをお勧めします。また、多焦点眼内レンズ挿入後に見え方でお困りの場合でも、再手術だけが選択肢とは限りません。屈折状態を詳しく確認し、眼鏡やコンタクトレンズなどで補正することで、見え方を改善できる場合もあります。
白内障手術や多焦点眼内レンズ挿入後、「遠くも近くもぼやける」「本が読みにくくなった」「期待していた見え方と違う」などのお悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。
※本記事は、お客様ご本人の許可を得たうえで、個人が特定されないよう配慮して掲載しています。
※白内障手術後に視力低下や急激な見え方の変化が生じた場合には、まず手術を受けた眼科または医療機関で診察を受けることが重要です。
