脳卒中による内斜視
- Sakura
- 2025年12月2日
- 読了時間: 3分
更新日:2025年12月15日
ご相談内容:「フレネル膜プリズムで複視は解決されたんですが、ぼやけて見えてしまい、車の運転や日常生活に不安を感じます」
今回は橋(脳幹)の脳卒中によって発症した内斜視による複視(ものが二重に見えること)を、フレネル膜プリズムによって調整されているお客様からのご相談です。内斜視の角度は約32⊿(プリズム:以下,⊿)と大きい角度(32⊿ × 0.57° ≒ 18.24°)の斜視です。
橋(脳幹の一部)に脳卒中が起きると、眼球を動かす神経が障害され、斜視による複視が起こります。PPRF(paramedian pontine reticular formation:傍正中橋網様体)が単独で障害された場合には、患側眼の外転制限による内斜視を呈します。この内斜視の機序は、患側への注視麻痺が外転眼(患側眼)でより顕著に出現するためと考えられています。
※城倉健. (2020). 脳卒中と眼球運動障害: 橋の神経眼科学. 神経眼科, 37(2), 129-139.より.
フレネル膜プリズムとは、透明なシート状のプリズムを眼鏡のレンズに貼り付けて、斜視による複視を矯正する方法です。メリットは斜視の症状(複視)を軽くできることですが、デメリットもあります。シート状のプリズムによる段差で見え方の質が低下してしまいます(視力やコントラスト感度の低下)。また、光の透過率も低下することから、車や自転車の運転には向いていません。さらに、シートがレンズから剝がれてしまうと、斜視による複視が再発します。したがって、長期使用には不向きとされています。
かかりつけの病院では「この角度の斜視はフレネル膜プリズムでしか矯正できない」と説明されたそうです。脳卒中の後遺症による斜視は時間の経過と共に角度が変化する場合があります。フレネル膜プリズムはシートを貼り変えるだけでプリズム量の調整が可能です。したがって、治療直後は斜視の角度が不安定な可能性が高いことから、フレネル膜プリズムの使用が推奨されます。しかし、今回のケースは治療後一定期間が経過しており、斜視角度も安定していることが眼科医の診断結果より示されていました。そこで、フレネル膜プリズムではどうしても見えづらさを感じるため、光学レンズでの斜視調整をご希望いただきました。

写真上の眼鏡はフレネル膜プリズムを貼りつけている状態です。レンズにプリズムの凹凸が無数にあり、透明度が低下しています。写真下の眼鏡は光学レンズによって製作した状態です。レンズの透明度が非常に高く、複視(ものが二つに見える)の症状を抑制しつつ、安定した視力とコントラストをご提供できます。
後日、お客様より「車の運転も視野良好です」とお声をいただきました。
谷町眼鏡店ではスペシャルレンズラボ(Special Lens Lab:Made in France)との提携によって超高度数レンズ(球面度数S±45.0D / 乱視度数C±15.0D / プリズム度数20⊿)の製作を行っております。今回のような大角度のプリズムレンズをはじめ、ICLやコンタクトレンズでの視力矯正が難しい度数でも対応が可能です。お気軽にお問い合わせください。
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