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​ブログでは視覚に関する論文紹介を中心に更新しています。

有酸素運動と高眼圧の予防

  • Sakura
  • 3月11日
  • 読了時間: 4分

更新日:3月12日

高眼圧は緑内障発症および進行の主要な危険因子として知られており、眼圧(intraocular pressure:IOP)の適切な管理は視機能の維持において重要とされています。一般に治療の中心は点眼薬や手術などの医療介入ですが、近年では生活習慣、とくに身体活動が眼圧に与える影響についても注目が集まっています。なかでも有酸素運動は、眼圧を低下させる可能性がある非薬物的介入として複数の研究で検討されています。

1) Pennisi, V., van den Bosch, J. J. O. N., Neustaeter, A., Ehmer, A., Thieme, H., Hoffmann, M. B., & Choritz, L. (2025). Assessment of the effect of physical activity on intraocular pressure using a novel implanted telemetric pressure sensor. British Journal of Ophthalmology, 109(10), 1138–1143.

2) Apriandary, N. P. D., & Rahayu, N. K. (2025). Physical exercise for reducing intraocular pressure in glaucoma: A systematic review. Cermin Dunia Kedokteran, 52(12), 745–751.


有酸素運動が眼圧に与える影響については、比較的早期から報告が存在しています(1990年代より)。Passoらは、運動習慣のない被験者に対して3か月間の有酸素運動トレーニングを実施した前向き研究において、平均眼圧が約4.6 mmHg(約20%)低下したことを報告しています。運動を中止すると数週間で眼圧が元の水準に戻ることも示されており、眼圧のコントロールには運動の継続が重要です。

3) Passo, M. S., Goldberg, L., Elliot, D. L., & Van Buskirk, E. M. (1991). Exercise training reduces intraocular pressure among subjects suspected of having glaucoma. JAMA Ophthalmology, 109(8), 1096–1098.


短期的な生理反応としても、有酸素運動は眼圧を低下させることが知られています。自転車エルゴメーターを用いた研究では、最大酸素摂取量の55〜75%程度の負荷で数分間の運動を行うと、平均眼圧が有意に低下することが示されました。このような急性の眼圧低下は運動後一定時間持続すると報告されており、身体活動が眼圧調節に直接的な影響を与える可能性が考えられます。

4) Elmurr, P., Thompson, M. W., & Goodacre, H. (1993). The effects of aerobic exercise on intraocular pressure. Australian Orthoptic Journal, 29, 18–23.


近年の研究では運動による眼圧低下の機序についても検討が進んでいます。Yuanらは、有酸素運動後に眼圧が低下するとともに、房水排出路であるSchlemm管の拡張が生じることを報告しており、運動が房水流出抵抗を改善する可能性を示しました。

5) Yuan, Y., Lin, T. P. H., Gao, K., Zhou, R., Radke, N. V., Lam, D. S. C., & Zhang, X. (2021). Aerobic exercise reduces intraocular pressure and expands Schlemm’s canal dimensions in healthy and primary open-angle glaucoma eyes. Indian Journal of Ophthalmology, 69(5), 1127–1134.


また、緑内障患者を対象としたランダム化比較試験においても、有酸素運動の有益性が報告されています。Maらの研究では、3か月間の定期的なジョギングを実施した群で眼圧が有意に低下し、同時に眼灌流圧(眼球に血液を供給する値):ocular perfusion pressure)が上昇したことが示されました。眼灌流圧の改善は視神経血流の維持に寄与する可能性があり、運動は眼圧低下のみならず視神経保護にも関連する可能性があります。

6) Ma, Q. Y., Zhou, J., Xue, Y. X., Xia, Y. T., Wu, J. G., & Yang, Y. X. (2022). Analysis of aerobic exercise influence on intraocular pressure and ocular perfusion pressure in patients with primary open-angle glaucoma: A randomized clinical trial. Indian Journal of Ophthalmology, 70(12), 4228–4234.


さらに、低強度の有酸素運動であっても眼圧低下効果が認められることが報告されています。低強度サイクリングを用いた研究では、運動中および運動後に眼圧が低下し、その効果は身体的フィットネスレベルが高い群でより顕著でした。この結果は、日常的な身体活動の継続が眼圧管理に寄与する可能性を示唆しています。

7) Gracitelli, C. P. B., et al. (2022). The intraocular pressure lowering effect of low-intensity aerobic exercise and the role of physical fitness. Research in Sports Medicine, 32(1), 1–10.


以上の研究結果を総合すると、有酸素運動は短期的にも長期的にも眼圧を低下させる可能性があり、高眼圧や緑内障に対する補助的な生活習慣介入として有用であると考えられます。ただし、運動は薬物治療の代替となるものではなく、あくまで補助的手段として位置づけるべきです。また、息こらえを伴う高負荷の筋力トレーニングなど一部の運動では眼圧が上昇する可能性も指摘されており、運動内容の選択には少し注意が必要です。

8) Weinreb, R. N., Aung, T., & Medeiros, F. A. (2014). The pathophysiology and treatment of glaucoma. The Lancet, 383(9920), 1111–1121.


現時点のエビデンスからは、ウォーキングやジョギングなどの中等度の有酸素運動を継続することが、高眼圧管理における有望な生活習慣介入の一つと考えられています。

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