網膜剥離術後のリカバリーレンズ
更新日:9月28日
ご相談内容:「網膜剥離の手術後、頭を傾けて見ないと焦点が定まりません」
網膜剥離の手術を受けられたお客様
網膜剥離の手術方法の一つに「強膜バックリング手術」があります。これは、眼球の外側にシリコン製のスポンジなどを縫い付け、眼球壁を内側に押し込むことで、剥離した網膜を元の位置に戻す手術です。網膜を復位させるために重要な手術ですが、術後には眼球運動に影響が生じることがあり、眼位のずれや複視(物が二重に見える)などの症状がみられる場合があります。
今回のお客様も、バックリング手術後から複視に悩まれていました。さらに、物を一つに見ようとすると自然に頭が傾いてしまう状態がみられました。このように、眼位や眼球運動のずれを頭の位置で補おうとして生じる頭位の変化を「眼性斜頸」といいます。今回は、手術を受けられた眼科クリニックからのご紹介でご来店いただきました。検査を行ったところ、遠方視において、垂直方向に10.26°(18Δ)、水平方向に5.7°(10Δ)の眼位ずれが確認されました。また、術後から頭を傾けて見る状態が続いていたこともあり、頸部の疲労感や胸鎖乳突筋の痛みにも悩まれていました。そこで今回は、眼位のずれをプリズムレンズによって補正し、できるだけ自然な頭位で両眼視できるよう調整することにしました。
プリズムレンズの調整
今回のように眼位のずれが比較的大きい場合、測定された眼位ずれをそのまますべてプリズムレンズで補正できるとは限りません。
そのため、実際に装用できる範囲を確認しながら、プリズム適応(Prism Adaptation:PA)を行い、プリズム度数を段階的に調整していきました。装用時の見え方や複視の状態、両眼視の安定性などを確認しながら調整を繰り返し、最終的には、
垂直方向:4.56°(8Δ)水平方向:2.85°(5Δ)
のプリズムレンズを用いることになりました。
また、術後から光をまぶしく感じやすくなったとのことでしたので、屋外でのまぶしさにも対応できるよう、今回は調光レンズで眼鏡を製作しました。
1か月後の経過
眼鏡をお渡ししてから約1か月後、定期チェックのためにご来店いただきました。
その際には、
「普段の生活では複視をほとんど感じなくなり、胸鎖乳突筋の痛みもほぼなくなりました」
とのことでした。プリズムレンズによって眼位のずれを補正したことで、物を一つに見るために頭を傾けて補正する必要性が少なくなり、結果として頸部への負担も軽減した可能性があります。一方で、長時間パソコン作業を行った際には、複視や頸部の疲労感を感じることがあるとのことでした。眼位や両眼視の状態は、見る距離や視作業の時間、疲労などによって変化することもあります。そのため、今後も定期的に状態を確認し、自覚症状が強くなった場合には、必要に応じてプリズム度数を再調整していくこととしました。
網膜手術後の見え方でお悩みの方へ
網膜剥離などの手術後、「物が二重に見える」「頭を傾けないと見づらい」「片方の目を閉じると楽になる」「目だけでなく首や肩まで疲れる」といった症状が現れることがあります。このような場合には、視力や屈折状態だけでなく、眼位や眼球運動、両眼視機能などを確認することも大切です。網膜手術後の見え方や複視でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
※本記事は、お客様ご本人の許可を得たうえで、個人が特定されないよう配慮して掲載しています。※網膜手術後に新たな複視や視力低下、視野の異常などが生じた場合には、まず手術を受けた眼科または医療機関で診察を受けることが重要です。
