近視予防(アップデート)
- Sakura
- 2月15日
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更新日:2月25日
近年、世界では近視進行を抑制するための医療機器や治療法の研究と普及、そして生活環境の改善を組み合わせることにより、多くのお子様が近視進行抑制の恩恵を受けています。
2025年9月25日、米国食品医薬品局(FDA)は、Essilor社の近視進行抑制眼鏡レンズ「Stellest」の販売を承認しました。FDA医療機器・放射線保健センター所長のMichelle Tarver氏は、FDAのリリースにおいて次のように述べています。「成人期における重度の視力障害の発症リスクを軽減する可能性のある新たな治療選択肢が市場にもたらされることになります。Stellest眼鏡レンズは、小児の近視進行を遅らせるためにこれまで承認されていた機器と比較して、使用が簡便であり、リスクも低いものです。」
1) U.S. Food and Drug Administration (FDA). FDA authorizes Essilor Stellest spectacle lenses for myopia control in children. September 25, 2025.
2) HealthDay News. FDA Approves Stellest Lenses to Slow Childhood Myopia. October 1, 2025.
Stellestレンズは、6〜12歳の小児において、近視(乱視の有無を問わず)の屈折矯正だけでなく、近視進行そのものを遅らせる効果が報告されています。日本国内でも、近視予防への取り組みが徐々に進んでいます。参天製薬からは、低濃度アトロピン製剤「リジュセアミニ点眼」が発売されました。低濃度アトロピン点眼は近視進行抑制効果が示されています。また、近視進行抑制コンタクトレンズとして、マイサイト1Day の処方も開始されています。同レンズは3年間のランダム化比較試験で有意な進行抑制効果が報告されています。
3) Bao, J., Yang, A., Huang, Y., Li, X., Pan, Y., Ding, C., Lim, E. W., Zheng, J., Spiegel, D. P., Drobe, B., Lu, F., & Chen, H. (2022). One-year myopia control efficacy of spectacle lenses with aspherical lenslets. The British journal of ophthalmology, 106(8), 1171–1176.
4) Yam, J. C., Jiang, Y., Tang, S. M., Law, A. K. P., Chan, J. J., Wong, E., Ko, S. T., Young, A. L., Tham, C. C., Chen, L. J., & Pang, C. P. (2019). Low-Concentration Atropine for Myopia Progression (LAMP) Study: A Randomized, Double-Blinded, Placebo-Controlled Trial of 0.05%, 0.025%, and 0.01% Atropine Eye Drops in Myopia Control. Ophthalmology, 126(1), 113–124.
5) Chamberlain, P., Peixoto-de-Matos, S. C., Logan, N. S., Ngo, C., Jones, D., & Young, G. (2019). A 3-year Randomized Clinical Trial of MiSight Lenses for Myopia Control. Optometry and vision science : official publication of the American Academy of Optometry, 96(8), 556–567.
さらに、日常生活においては「屋外活動時間の増加」が近視抑制に有効であることもメタアナリシスにより示されています。
6) Xiong, S., Sankaridurg, P., Naduvilath, T., Zang, J., Zou, H., Zhu, J., Lv, M., He, X., & Xu, X. (2017). Time spent in outdoor activities in relation to myopia prevention and control: a meta-analysis and systematic review. Acta ophthalmologica, 95(6), 551–566.
強度近視を防ぐことの意義
強度近視は、
緑内障
網膜剥離
近視性黄斑変性
などの重篤な眼疾患のリスクを高めることが知られています。近視進行を抑制できれば、これらの合併症リスクを低減できる可能性があります。また、将来的な眼鏡・コンタクトレンズ購入費用や屈折矯正手術の必要性も減少することが期待されます。
7) Flitcroft D. I. (2012). The complex interactions of retinal, optical and environmental factors in myopia aetiology. Progress in retinal and eye research, 31(6), 622–660.
近視は矯正する時代から予防する時代へ
これまでの眼科医療は、近視による視力低下を「矯正」することが中心でした。しかしこれからは、近視の進行そのものを抑制する時代へと移行していくと考えられます。日本の医療は治療レベルにおいて世界的に高い評価を受けていますが、予防医療の分野では欧米諸国より遅れているとの指摘もあります。歯科医療の取り組みにより虫歯が大幅に減少したように、眼科領域でも近視予防が社会的に普及すれば、将来の視力低下の状況は大きく変わる可能性があります。目の分野においても「治療」だけでなく「予防」という視点がさらに広がることを期待したいと思います。